息切れとは
息切れは、酸素不足を補うために呼吸が乱れる状態を指します。健康な方であっても全速力で走ったりすると息切れすることがあります。
しかし、原因となる病気がある場合、平地を歩いているだけでも息切れしたり、さらに症状が進行するとわずかな動作でも息切れが起こったりします。
呼吸が荒い、息切れがする、息苦しくて目覚める、呼吸が重く、頻繁に深呼吸するなどの症状があります。
これらの症状は心疾患が原因であることも多いので、息切れの症状を感じたらなるべく早めに当院までご相談ください。
息切れの原因
酸素は、呼吸によって肺に到達した空気から体内に取り込まれ、心臓から流れる血液によって全身に送られます。また、血液は酸素を送り込む時に、同時に老廃物や二酸化炭素を収集し、これを肺から排出します。呼吸による酸素供給と二酸化炭素排出が正常に機能しないと、血液循環にも変調が起こり、結果的に息切れが起こることがあります。
また、息切れは全身の組織が酸素不足と勘違いすることによって発生する場合や、重篤な病気が原因で起こることもあります。
これまで経験がなかったような類の動作で息切れが起こる場合は、なるべく早めにご相談いただくことをお勧めします。
息切れを伴う病気
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
かつては肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた、息切れの症状を引き起こす病気です。有害物質の吸収により、肺の細胞が弾力性を失って慢性気管支炎になり、最終的には呼吸不全の状態にまで進行します。ほとんどの患者様に習慣的な喫煙歴があり、主な原因の1つは喫煙とされています。風邪やインフルエンザなどの感染症が症状を急激に悪化させることもあります。
気管支喘息
アレルギーやその他の要因によって気管に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなって呼吸が困難になります。喘息発作が起こると、ゼーゼーと喘鳴が出たり、ヒューヒューと呼吸が荒くなったりします。治療には、発作の症状を和らげる方法と、慢性炎症を改善する方法などがあります。
貧血
最もよく見られる貧血である鉄欠乏性貧血は、出血や鉄の不足によって体内の鉄が不足することによって起こります。
ヘモグロビンは赤血球中に存在し、血中の酸素を輸送しますが、鉄不足の場合、ヘモグロビンの生成量が減り、それが貧血を引き起こします。
一方、腎性貧血といって、腎臓の機能低下により正常な血液合成が阻害されることによって起こる貧血もあります。貧血により体内の酸素が不足すると、めまい、倦怠感、動悸、息切れなどの症状が現れます。
貧血は一般的に女性に多いと思われがちですが、男性でも消化管出血が原因で発症することがあります。
心不全
心不全は、心臓がうまく機能せず、必要な量の血液を全身に運ぶことができなくなる状態です。心臓から血液を送り出せず肺で血液のうっ滞が起こることで、血液中の水分が肺に染み出てしまい、息切れの症状を起こしやすくなります。
また、睡眠時無呼吸症候群は心臓への負担を増やし、睡眠中に心臓を休ませることができないため、心機能に支障をきたしやすくなります。
心不全患者様の30~40%が睡眠時無呼吸症候群を併発しているという統計もあります。
睡眠時無呼吸症候群と心不全が併存している場合、睡眠時無呼吸症候群を適切に治療しなければ、死亡リスクは2~3倍に高まると言われています。
狭心症
心臓は弛緩と収縮を繰り返す心筋の拍動によって全身に血液を運んでいます。
心筋が機能するためには多くの栄養と酸素が使われ、それにより血液は冠動脈から心筋に送られます。この冠動脈への血流が一時的に減少し、心筋が酸素不足に陥った状態を狭心症といいます。
動脈硬化はこの症状の主な原因であり、放置すると冠動脈の狭窄や閉塞を引き起こし、心筋梗塞を発症するリスクもあります。
心筋梗塞は深刻な症状に繋がる病気ですので、狭心症が疑われる場合は早めに当院にご相談いただくことをお勧めします。
不整脈
睡眠時無呼吸症候群により、拍動が不規則になり不整脈が引き起こる可能性があります。
無呼吸状態が頻繁に発生することで、自律神経の乱れによる不整脈が生じたり、呼吸の停止・再開の際に不整脈が生じたりすることがあります。その原因は多岐にわたります。
不整脈の経過を観察することが有効な場合もありますが、中には深刻な状態に進展する可能性があるため、注意が必要です。
不整脈がある場合は、できるだけ早く当院にご相談いただくことを推奨しています。
また、睡眠時無呼吸症候群の治療によって睡眠中の無呼吸や低呼吸が解消されると、結果として不整脈が改善に向かうこともあります。
腎機能障害
腎機能が低下すると尿の量が減り、体内の水分量が増えて腹水や胸水、むくみなどの症状が現れます。また、血管内の水分増加やむくみは心臓に大きな負担をかけ、息切れなどの症状を引き起こします。
心筋梗塞
心筋梗塞では激しい胸痛が起こり、胸の中心から左側、左胸の内側、のど、奥歯、あご、みぞおちにかけて痛みが広がります。
症状としては、締め付けられるような痛み、灼熱感、強い圧迫感、息苦しさ、動悸、呼吸困難、失神、腹痛、吐き気などがあります。心筋への血流が阻害され、心筋組織が壊死するため、迅速に専門医を受診することが大切です。
また、糖尿病などで感覚が鈍くなっていると、心筋梗塞の痛みを意識しにくいとも言われます。
急性心筋梗塞は狭心症の悪化に伴って発症することもありますが、突然発症することもあります。緊急性の度合いを確認するためにも、まずはお早めにご相談ください。
息切れの検査
息切れの症状がある場合は、問診、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図検査、呼吸機能検査などを検討します。
また、血中の酸素濃度を測定するためにパルスオキシメーターを装着いただく場合もあります。
血管造影、CTスキャン、換気血流シンチグラフィーなど専門的な検査が必要な患者様に対しては、提携の高度医療機関をご紹介します。
息切れの治療
原因となる病気によって、息切れの治療法は異なります。症状が軽い場合は薬物療法や呼吸療法を行います。症状が重い場合や酸素飽和度が低い場合は、酸素投与や人工呼吸器の導入が検討されることもあります。
受診のチェック
MRC息切れスケールでは、症状をグレード0から5まで分類しています。数値が高いほど症状が重く、グレード2以上の方は、他の症状がなくても専門医に相談する必要があります。
グレード | 症状 |
グレード0 | 息切れがない |
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グレード1 | 激しい動作や運動時に息切れが起こる(運動時) |
グレード2 | 平地を早足で歩いたり、急すぎない坂道を登ったりした時に息切れする |
グレード3 | 平地で、同年代の人よりも歩くのが遅い。自分のペースで歩いていて息継ぎのために足を止める |
グレード4 | 時折止まって息を整えないと、平地で数分間または約100ヤード(約90メートル)歩けない |
グレード5 | 外出が困難なほどの激しい息切れが起こり、着替えなどの日常の些細な動作でも息切れが起こる。 |