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慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が健康な人の60%未満に低下する(eGFRが60mℓ/分/1.73㎡未満)か、タンパク尿が持続する状態を指します。
年をとるにつれて腎機能は低下するため、高齢者においてCKDの発生率が高まります。高血圧糖尿病脂質代謝異常(コレステロールや中性脂肪の増加)、肥満、メタボリックシンドローム、遺伝的要因などがCKDのリスク要因として挙げられます。
CKDはまた、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の重要な危険因子でもあります。
つまり、腎臓の機能を保つことは、心臓や脳の健康を守ることに直結します。

慢性腎臓病(CKD)の定義

下記のいずれか、または両方が3ヶ月以上続いている状態

  • 腎障害 : たんぱく尿(微量アルプミン尿を含む)などの尿異常、画像診断や血液検査、病理診断、腎移植の既往で腎障害が明らかである状態
  • 腎機能の低下:血清クレアチニン値をもとに推算した糸球体濾過量(eGFR)が60ml/分/1.73㎡未満の状態

引用:日本腎臓学会編「CKD診療ガイド」2023より

検査方法

腎機能の低下を確認する手段として、尿検査や血液検査が一般的に用いられます。これらは早期の異常を検出するために手軽に実施されます。
さらに、エコーなどの画像検査も併用されることがあります。

尿検査

尿検査は、尿中のタンパク、糖、潜血、白血球、比重などを測定し、腎機能低下や病変の有無を調べる検査法です。
この検査で発見できる病態は次の通りです。

タンパク尿

尿タンパクが多い場合、腎機能が低下している可能性があります。
しかし、健康な方でも尿中にタンパクが出ることはあります。
特に運動後や風邪をひいた時などは、タンパクの量が増える場合があります。

微量アルブミン尿

糖尿病の初期には、アルブミン(Alb)と呼ばれる、通常は血中に含まれているタンパク質が尿中に検出されます。
これにより、糖尿病を早期に発見する手助けとなります。

潜血反応

尿中に血液が見えるだけでなく、見えなくても赤血球が尿中に存在することがあります。
これが尿潜血ですが、目に見えなくても尿に赤血球が混じっている状態を血尿といいます。
血尿の原因は多々ありますが、腎炎の可能性を知ることができるため、最も重要な検査の1つです。

尿糖

血中の糖の量を示すのが血糖値ですが、血糖値が高い状態が続くと尿からも糖が検知されることがあります。
その原因として最も可能性が高いのは糖尿病です。ただし、健康な方でも何らかの原因で一時的に尿に糖が出ることがあるので、血液検査と合わせて診断します。

血液検査

腎臓は、血中の老廃物をろ過して尿の形で体外に排出する役割や、赤血球生成に関与するエリスロポエチンといったホルモンを分泌する重要な臓器です。
血液と密接な関わりを持つため、腎臓の健康状態は血液検査によって評価され、腎障害を早期に発見する手助けとなります。
主な腎臓関連の血液検査項目には、血清クレアチニン(Cr)、血清尿素窒素(BUN)、およびナトリウム、カリウムなどの電解質が含まれます。

血清クレアチニン

クレアチニンは筋肉から排出される老廃物の一種であり、クレアチニン濃度が高い場合は腎機能の低下を意味します。
腎臓病の進行度合いを評価するeGFRは、このクレアチニン濃度の数値から算出されます。

血清尿素窒素(BUN)

尿素に含まれる窒素量のことを、血清尿素窒素と言います。タンパク質が分解されるとアンモニアとなり、このアンモニアは肝臓で尿素に変換されます。
尿素は腎臓でろ過され、体外に排泄されますが、腎機能が低下していると血中の尿素窒素濃度が高い値を示します。

その他の血液検査項目

腎機能の低下により、血中のカリウム濃度が上昇し、高カリウム血症が生じる可能性があります。
同時に、ナトリウム、クロール、カルシウムなどの異常値も見られることがあります。
また、造血ホルモンの異常により、ヘモグロビン値やヘマトクリット値が下がることもあります。これらの数値が低いと貧血の可能性があります。

慢性腎臓病(CKD)のステージ

GFR区分   進行度別分類 GFR(eGFR)(mL/分/1.73) ステージの特長や対策
G1 正常または高値 90以上

~尿蛋白などの腎障害なしの方~
健康診断などで、CKD検査を年に1度程度受けることをお勧めします。

~尿アルブミン・尿蛋白など尿検査異常ありの方~
CKDの疑いがあるため、医療機関への受診をお勧めします。
また、尿蛋白が2+以上の方や血尿と尿蛋白がどちらも陽性の方は一度、腎臓専門医への受診をお勧めします。

G2 正常または軽度低下 60〜89

~尿蛋白などの腎障害なしの方~
健康診断などで、CKD検査を年に1度程度受けることをお勧めします。

~尿アルブミン・尿蛋白など尿検査異常ありの方~
CKDの疑いがあるため、医療機関への受診をお勧めします。
G1同様、尿蛋白が2+以上の方や血尿と尿蛋白がどちらも陽性の方は一度、腎臓専門医への受診をお勧めします。

G3a 軽度~中等度低下 45〜59

CKDが疑われるため、医療機関を受診してください。
生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)は、CKDを悪化させる要因になります。適切な治療を受けましょう。

G3b 中等度~高度低下 30〜44 CKDが強く疑われるため、なるべく早く医療機関を受診してください。CKDの方は、腎不全(腎臓の機能低下)のリスクが高く、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)にかかりやすい傾向があります。この段階では、通常は腎臓専門医に診てもらう必要があります。
G4 高度低下 15〜29

CKDに該当します。腎機能の低下により、貧血やミネラル以上、骨の異常などを合併している恐れがあります。速やかに医療機関を受診してください。
重症な腎不全になるリスクが高く、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)にかかりやすい状態です。腎臓専門医による治療が必要とされます。
透析療法や腎臓移植についての説明を受けて、そのような治療が必要になった場合にどうするか、腎臓専門医に相談すると良いでしょう。

G5 高度低下~末期腎不全 15未満

透析治療などを必要とする直前の状態ですので、速やかに医療機関を受診してください。この段階では、腎臓専門医の治療が必要です。
ほとんどの場合、腎臓機能低下によるさまざまな異常(貧血、ミネラル異常、骨の異常など)が合併していますので、それらの治療が必要です。
腎臓専門医から透析療法や腎臓移植に関する説明を受け、そのような治療が必要になった場合の治療法の選択を事前に検討しておきましょう。

引用:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023

当院では透析療法や腎臓移植が必要と医師が判断した場合には、患者様のご希望などをふまえ、適切な高度医療機関にご紹介しております。

慢性腎臓病(CKD)の治療

腎臓を守るためには、原因となる病気の治療が基本となります。
たとえば、高血圧の場合は血圧の管理、糖尿病の場合は適正な血糖値の維持、免疫異常の場合はその症状の沈静化などであり、薬物療法による治療を中心に行います。
また、「食事管理」も腎臓病の治療において非常に重要です。塩分の摂りすぎは血圧上昇を招きますし、タンパク質の摂りすぎは腎臓に直接的にも間接的にも悪影響を及ぼすことがあります。さらに、腎機能が低下している場合は、カリウムの摂り過ぎにも要注意です。

当院では、患者様の慢性腎臓病や原因となる病気、病状、服薬状況、生活背景などを考慮し、「食べる楽しみ」を奪うことなく個々に最適な薬物療法や食事療法をご提案します。