便秘
日本内科学会では、便秘を「3日以上排便がない」「排便後にも残便感がある」と定義しています。つまり、便秘とは、便が腸内に滞留し、長期間排出されない状態のことです。
何日も排便がない、排便はあるが完全に排便された感じがしない、少しずつしか排便されないなどの状態が繰り返される場合は、医療機関を受診し、症状に応じた治療を受けることをお勧めします。
便秘を放っておくと、隠れている重大な病気を見落とすこともありますし、様々な病気を誘発する可能性もあるため注意が必要です。
便秘の原因
便秘の原因は多岐にわたり、大腸や直腸の運動異常による「機能性便秘」と、病気や大腸の形態異常など器質的な要因で便が物理的に詰まってしまう「器質性便秘」に大別されます。
機能性便秘
機能性便秘は、結腸や直腸の機能と、便意に関連する神経伝達が弱まることによって起こります。大きく分けて、
①大腸の運動機能が弱まることで、便が排出されにくくなる弛緩性便秘
②ストレスなどで副交感神経が過剰に興奮することで、腸が緊張して便が出にくくなる痙攣性便秘
③加齢などにより、便は直腸まで到達するものの便意が生じなくなる直腸線便秘
の3種類に大別することができます。
原因としては、食事の摂取量が少ない、水分摂取量が少ない、脂肪分の摂取量が多いなどの食生活の問題や、ストレス、不安、下痢止め薬の長期使用などが挙げられます。
その他の原因としては、加齢や療養生活での運動不足で、腸の蠕動運動そのものが低下することも考えられます。
器質性便秘
大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病などの病気や大腸手術後の癒着、女性の場合には直腸の一部が膣に飛び出す直腸瘤などが、器質性便秘の一般的な症状となります。
便秘がこのような状態に関連している場合、まずは根本的な病気の治療が重要です。特に、下剤の使用は腸管破裂のリスクがあるため避けましょう。
単なる便秘と軽視せず、日常と異なる症状が見られた場合は、どんなに小さな変化でも当院までお気軽にご相談ください。
便秘の症状
便秘とは、3日以上排便がない、または排便があっても残便感がある状態をいいます。便秘の最も一般的な直接的症状としては、排便回数や量の減少、頑張って力んでも排便が少ない、便が細い、排便後にお腹がすっきりしない、便がお腹に残っている感じがする、などが挙げられます。
他症状としては、お腹の膨満感、普段よりも強いガス臭、慢性的な腹痛、肌の調子が悪い、にきびや吹き出物ができやすいなどがあります。
便秘の治療
食習慣改善
暴飲暴食を避けることは言うまでもありませんが、食事や水分の摂取が不足する事なども便秘の原因となります。また、たんぱく質や脂肪に偏った食事も同様です。
日々の食事を1日3回の決まった時間に、それぞれをバランスよく摂り、水分を適切に補給することが重要です。
生活習慣の改善
健康的な排便には規則正しい生活習慣が重要です。夜更かしを避け、毎晩なるべく同じ時間に就寝し、規則正しい起床を心掛けましょう。
また、ストレスが多い方は、自分がリラックスできる場所を意識的に作り、休息の時間を確保することも必要です。運動不足の方は、毎日決まった時間に運動やストレッチ、散歩を行う習慣などを身につけることが大切です。
薬物療法
便秘の症状や、患者様それぞれの生活状況に応じて、便の硬さを調整するための様々な種類の下剤を中心に、便通を促進する薬や消化管の運動を活性化する薬を処方します。
また、他の病気の治療のために服用中の薬が便秘を引き起こしている可能性も考えられます。
例えば、血圧の降圧剤、下痢止め薬、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬などを服用していて便秘の症状が見られる場合は、薬の調整や変更が検討されることがあります。
下痢
下痢の原因は様々ですが、多くの場合、下痢に伴う腹痛は排便後に治まるため、あまり気にせず放置してしまいしがちです。
しかし、習慣的な下痢は生活の質(QOL)を大きく低下させることに繋がります。さらに、下痢の背後には重篤な病気が隠れている可能性もあります。潰瘍性大腸炎やクローン病など、難病に指定されている病気もあります。
一度治ってもすぐに下痢を繰り返す方は、まず当院にご相談ください。
下痢の原因
食べ過ぎやお酒の飲みすぎ、唐辛子など刺激物の摂取で胃を刺激したり、冷たいものの摂取でお腹を冷やしたり、その他ストレスや緊張など、下痢は様々な原因で起こります。
また、細菌やウィルスによる感染症や慢性的な腸の病気も下痢の要因となります。
生活習慣
食生活など、生活習慣に関連して下痢が起こる要因としては、以下のようなことが挙げられます。飲み過ぎや食べ過ぎは胃酸の過剰分泌を促し、下痢を引き起こします。
お酒や辛い香辛料の摂りすぎは腸の蠕動運動を刺激して下痢を誘発することがあります。また、冷たいものの摂りすぎや体温の低下は血行を悪化させ、これも下痢の原因となります。さらに、ストレスや緊張は自律神経を刺激して下痢を引き起こす場合があります。
感染
風邪や食中毒による下痢は、ほとんどの場合、感染性胃腸炎が原因です。ウィルス性胃腸炎は、ノロウィルス、ロタウィルス、アデノウィルスなどのウィルスなどによるものです。
一方、細菌によるものは細菌性胃腸炎と呼ばれ、O157などの病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなどが主な病原体です。
赤痢やコレラも細菌感染によって下痢を起こしますが、これらは日本では年間数件程度と非常に珍しい病気になっています。
下痢の症状が重く、脱水、高熱、嘔吐を引き起こす場合は、早めに受診する必要があります。
大腸がん
大腸がんは、初期段階ではあまり症状が現れない病気です。代表的な症状のひとつとしては、進行すると、便秘と下痢を交互に繰り返すことが挙げられます。
大腸がんが大きくなると便の通過が妨げられ、便秘の原因になります。便秘によって大量の便が体内に蓄積すると、体は便を柔らかくして排泄しようとし、結果として大量の水分が分泌され、下痢が発生します。便秘後の下痢や下痢止め薬の服用による便秘は日常的によく見られる症状ですが、このような症状を繰り返す場合には大腸がんの可能性が考えられますので、まずは当院への受診をお勧めします。