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腎性貧血
(鉄剤を飲んでも貧血が治らない)

貧血の原因は腎臓かもしれません

腎臓は様々なホルモンを分泌しており、その中には赤血球の生成を促すエリスロポエチンがあります。腎臓の機能が低下すると、エリスロポエチンの分泌も減少し、赤血球生成の能力が低下して貧血が起こります。この状態を「腎性貧血」と呼びます。
貧血の原因は、単に腎機能の低下だけでなく、さまざまな要因に影響されます。その一部を以下に挙げます。

  • 鉄分の不足
  • 生理などの出血過多
  • 亜鉛・ビタミンB12・葉酸・亜鉛の不足
 など
腎臓病患者様の貧血においては、治療法が原因によって異なります。そのため腎性貧血以外の要因が潜んでいないかどうかを確認するため、必要に応じて血液検査を行います。

腎性貧血の症状

腎機能が低下して赤血球が減ると、体内の酸素が奪われます。その結果として動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、疲労感がおさまらないなどの症状が現れます。
しかし、腎臓の機能低下は一般に進行が遅いため、患者様によっては貧血の症状が次第に慣れ親しんだものとなり、それが普通の状態のようになってしまうことも考えられます。
慢性腎臓病(CKD)の患者様は定期的な検診を受けるため、その際の血液検査で貧血の有無や程度がわかります。
腎性貧血の適切な治療は、患者様の生活の質(QOL)を改善し、腎臓病の治療にも良い影響を与えます。そのため定期健診の継続的な受診は強く推奨されます。
通常、貧血の原因は鉄欠乏によることが多く、鉄分を摂取することで改善すると考えてしまいがちです。しかし、腎性貧血は赤血球生成能力そのものの低下が原因であり、単に鉄分を摂取するだけでは解決しません。医師と相談しながら、適切な治療を受けることが重要です。

腎性貧血の検査・診断

腎性貧血を診断するためには、腎機能低下以外の要因を排除する必要があります。このため、主に血液検査を中心とした検査が行われます。
また、補助的にはエリスロポエチンという造血ホルモンの測定も行うことができます。

腎性貧血の治療

不足した造血ホルモンの補充として、人工エリスロポエチンを含むエリスロポエチン製剤の注射や、赤血球造血に直接働きかける赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を内服することがあります。また、場合によっては鉄剤も処方されることがあります。

腎性貧血の治療目標

慢性腎臓病(CKD)に伴う腎性貧血の治療目標は、ガイドラインによればヘモグロビン値が11g/dLから13g/dLの範囲内にあることが望ましいとされています。
治療の結果、ヘモグロビン値がこの範囲を超えた場合は、患者様の状態に応じてエリスロポエチン製剤やESAなどの投薬を減量または中止して経過を観察します。
ただし、重篤な心疾患や血管障害の場合は、治療との兼ね合いにより、ヘモグロビン値が12g/dLを超えた時点で減量や休薬が検討される場合もあります。
なお、体内の鉄分が不足してヘモグロビンの生成が不十分となる鉄欠乏性貧血は、腎性貧血とは原因も治療法も異なります。
貧血は鉄分を補給すれば治ると考えられがちですが、腎性貧血は鉄剤の補給だけでは改善が難しいとされています。

腎性貧血と貧血

  腎性貧血 一般的な貧血(鉄欠乏性貧血)
原因 腎機能の低下によるエリスロポエチン不足 鉄欠乏、ビタミンB12欠乏、慢性疾患などによる貧血
血中の特徴 ヘモグロビン減少、赤血球数減少、平均赤血球容積減少 ヘモグロビン減少、赤血球数減少、平均赤血球容積正常
症状 疲れやすくなる、動悸・息切れ、めまい 疲れやすくなる、息切れ、めまい、頭痛、皮膚の蒼白、冷え性
治療 人工的なエリスロポエチンの投薬、腎機能の改善、栄養補助 鉄分補給、ビタミンB12補給、原因に応じた治療